無口な彼の、ヒミツと本心


芹沢くんとの距離感は、私だけじゃなく社員全員が同じほどのもので、昔と違って芹沢くんが馴染んでいるように見えるのは業務時間中だけだ


芹沢くんは時間が来るとすぐに居なくなる


それが当たり前になってしまった今では、良く思わない人間が多いとはいえ表立って問題視して騒ぐ人間もそれほどいない


私は芹沢くんの話題になりそうになると意図して話題をすり替える


それほどまでに、過去の苦い経験は私に反省させるものだった


もう、あんな思いはしたくない




「お疲れ様ー」


最後の残業仲間の同僚がオフィスを出て、今日も最後の1人となった私は彼女を見送り、静まり返ったオフィスでかさばっている仕事を片っ端から処理していく


日中の慌ただしい中でははかどらない業務も、誰にも邪魔されないこの環境になると驚くほどのスピードで終わるのだ。