「似合うね、良かった。」
お店を出て早々、屈託なく笑われれば一瞬言葉に窮する
だけど、携帯を開きカチカチと打った文章を見せる
『お金、払います。ご迷惑をおかけしました。』
「別に良いよ。こっちが悪いんだし、気にしないで。」
『けど、知らない人にそんな事をされる理由がありません。』
切り離すように目線をきつくする
初対面なのに私自身がここまで関わるなんて初めての事だ
声を無くして以来、知らない人と話すことなんて、ざらでこんなに長い間一緒にいる事がめずらしい
「そんなにお金払いたい?」
『それが妥当ですから。』
「じゃあ、これから付き合って。」
「ほら、早く!」
訳が分からず停止をしてしまう
そのまま止まった私の意志を無視して青年は手を引いて走りだした
私は引かれる手に着いていくしか出来なかった
