自分のマンションから電車を乗り継いで30分後、コウヤさんが住むアパートに着きました。

「本来ならレイの手伝いをする筈だから、今日はいる予定なんだが……」

加藤さんはそう言って、部屋のチャイムを鳴らしました。

一度じゃ誰も出てこない。
加藤さんはチャイムを連打して、ついにはドアを叩きました。

「おいっ!コウヤ!…俺だ!加藤だ!いるんだろう⁉︎ 開けろっ‼︎ 」

勝手に決めつけてるみたい。
いるかどうかも、分かりもしないのに。



「…加藤さん…?」

中からくぐもった声が聞こえました。
驚く私を振り向いて、加藤さんが親指を立てた。

ガチャと外れるチェーンの音。
カチンとドアロックが外された途端、加藤さんは思いきりドアを引っ張って開けた。


ドアの向こうから、大きく目を見開くコウヤさんの姿が現れました。
加藤さんは一歩足を踏み入れて、彼に問いただした。

「レイがここにいるだろう?」

確定的な言い方に、ハラハラしながら背中を見てた。
コウヤさんは一瞬口を噤んで、慌ててドアを閉めようとしたけど、踏み込んでる加藤さんの足に阻まれて、閉めることもできずにいた。

二人はドアを挟んだまま、押したり引いたりを繰り返して、結局、コウヤさんが諦めました。

「……います…」

その声に、思わず駆け寄った。
加藤さんの開けてるドアを思いきり引っ張って、コウヤさんに頼んだ。

「…会わせて下さい!」

「リリィちゃん…!」