恋する時間を私に下さい

毎月トップを飾る礼生さんの手伝いは、出版社とアシスタントの中で、無言の約束みたいになってるようでした。

「いつもこの時期に修羅場が来るから、他の仕事は入れないように…と言ってあるのに…」

話しながらこっちにへ来て、私に気づきました。

「……君は?」

泣きはらした目の私は、すぐには声が出せなくて、代わりにセイジさんが答えてくれた。

「隣に住んでるリリィちゃん。レイの世話係」
「ああ…なんかそういえば言ってたな。『飯作るのが上手い奴がいる』って……君のことか」

「……えっ…」

なんだか今、聞き捨てならない言葉を耳にしたような気がする。

『飯作るのが上手い』……?

(礼生さんが私のことをそんなふうに言ってた…?)

「レイの健康管理をしてくれてたんだろう?…ありがとうな…」

しゃがみ込んでる私に合わせて膝を折り、加藤さんはお礼を言いました。

「い…いえ。私は何も…」

(ただ、礼生さんに怒鳴られてご飯を作ったのがきっかけで、素顔を知ってしまったが為に、否応なしに家事を任されることになって、それをこの最近まで、必死にこなしてただけで……)


ポロポロ…とまた涙が溢れ落ちた。
それを見て加藤さんという人が慌てる。

「おいおい、どうしたのかね」

声をかける人に、セイジさんが意地悪く言った。

「…加藤さんのせいですよ。…レイに連載を続けさせたから…」

その言葉に加藤さんを後ろを振り返った。