「お邪魔しましたぁー!」

バァン!と、ドアを閉めて猛ダッシュ。
そんなことしなくても、私の部屋は隣だった。
 

ゼーゼー、ハーハー…

息切れと動悸がスゴい。
加えて、何!? この胸のざわめき。

初めて聞くような気がする。
ゾクゾクする感じは、ホラー小説読んだ後にも似てる。

初めて見る上司の別顔。


『お前は…帰んねーの!?…ここに泊まる気か!? 』


…怪しい色気が漂ってた。
あれは、いつも見てる緒方さんじゃない。

…別人だ……。

「…うん!きっとそうだ!」


…勝手に思い込もうとした。
これから先起こる不運に気づきもしないで、私はただひたすら、そうだそうだ…と、部屋の中で繰り返したーーーー。



………でも。

……あれ以降、私は事ある毎に、緒方さんからの呼び出しを受けてる。


「ちょっと来い!」

「は、はぃぃっ!」

「これ読んどけ!」

「えっ…⁉︎ 」

「この映画も見ろっ!」

「はっ…⁉︎ 」

「修羅場が近い!飯作っとけ!」

「な…なんでぇ…⁉︎ 」


質問の答えはいつも同じ。


「…お前が俺の素顔を知ったからだ!」


「え〜⁉︎ そ…そんなぁ〜!」