恋する時間を私に下さい

「私……気が動転して…二度と礼生さんの部屋に来ないって言ったの……それから…仕事もやめるって……」

あんな切羽詰まった顔してたのに、二度と自分から彼に近づかない…と宣言した。

近づくも何も…まだ側に寄ってもいなかったのに……。


「サイテーだな…」

スグルさんの声がしました。

「逆上してオンナに手ぇ出そうとするなんて、見下げたヤツだよ!」

バカにしたような言い方に、アラシさんが突っ掛かった。

「そんなことねーよ!緒方さんはそれほど、気ぃー張り詰めてたんだよ!」

「そうだよ!スグルはペンの進まね〜レイさんを見てね〜から、知らね〜だけだよ!」

立ち上がってトドロキさんも援護しました。


震えてる私の側にきたのはセイジさん。
同じように膝を折って、ポン…と頭に手を置きました。


「……怖かったな…」

その声に顔を上げてセイジさんを見ました。
目の中に涙が溜まっていくのがわかる。
慌てて、握りこぶしで両目を押さえつけた。

「…怖かったけど……礼生さんの顔はとても苦しそうだった……なのに…私はそんなのお構いなく逃げ出してしまって……」

せっかく、名前で呼んでもらったのに、そんなのに見向きもしないで走り去った。
あれは礼生さんが望んでやった事じゃない…と思いながらも、結局、朝まで何もしようとしなかった……。

「私が…礼生さんのこと……受け止めなかったばかりに……」

あの後の礼生さんのことを何も考えなかった。
怖さばかりが先立って、一人になった彼のことまで気が回らなかった。