恋する時間を私に下さい

マンションに帰り着いたのは、それから小一時間くらい後でした。

礼生さんの部屋の前には、電話をくれたトドロキさんの他、アラシさんとセイジさんがいて、皆は私と一緒に現れたスグルさんに向かって、「やっと来たのか…!」と大声をあげた。


「何やってたんだよ!電話かけても応答もしてこねぇで!」

「レイさんのことが心配じゃね〜のか⁉︎ 」

「冷てーヤツだな!」

強過ぎる言い方に、スグルさんは「ふんっ」と鼻息を荒くした。

「たかが姿をくらましたくらいで、大げさ過ぎんだよ!…相手は大のオトナだろ⁉︎ 」

ジャラジャラとキーホルダーの束を揺らすスグルさんのことを三人が睨んでる。
でも、今は仲違いをしてる場合じゃありません。


「……コウヤさんは?」

顔ぶれを見ながら聞いてみた。

「…今、仕事でこっちに来れないって」
「コウヤの野郎、こんな時でも他のマンガ家のアシやってんだよ!」
「緒方さんが一番信頼してるヤツなのにさ!」

アラシさんの言葉を聞きながら、真面目そうなコウヤさんの顔を思い浮かべた。
礼生さんの口から、何度も「一番マトモな奴」って言葉が出てた。
でも、こんな時に限って、他の人のアシスタントしてるなんて……

ヨロヨロ…と力が抜けたように座り込んだ。
トドロキさんが驚いて、私の側に寄ってくる。

「…リリィちゃん、平気?」

顔を覗き込んでる。
一応は頷く。でも、声が出せない。