その日も妹はニコニコしながらやって来た。
お弁当の袋をぶら下げて、「皆で食べましょう?」と言った。


(弁当か…同じ作ってあるものなら、手作りの方がいいな……)

モソモソ…と口に入れながら、アイツの作った料理を思い出してた。

昼休みに病院へ行った後から、左手の包帯が外れてガーゼになってた。
着実に良くなってるようで安心した。
早く水を使えるようになって、前みたいにここで食事を作って欲しい…。

トントン…と規則正しいリズムで刻まれる包丁の音を聞くと仕事が捗った。
今のこのスランプも、考えてみたらアイツがここに来なくなってからのような気がする。

アイツの作ったあったかい飯を食うと、やるぞ!…という気になれた。
こんな冷凍食品ばっか詰め込んだ弁当じゃ、力も湧かない……。


「……美味しくないですか?」

美人の妹が目の前に立ってた。
この子は本当に整った顔立ちをしてる。
目も鼻も口も、全部が正しい位置に並んでる気がして、補正する必要も何もない。

(…こんなのが妹だったら、コンプレックス持つだろうな…)

小さな目のアイツを思い出しながら考えてた。
顔立ちは酷い訳じゃない。

顎のラインは妹より綺麗だし、耳たぶだって愛くるしい。
何より唇が小さくて色っぽくて、赤みが強くて吸いつきたくなる。


(男好きのする顔…と言ったらいいか…)

思い出しながらゾクッとするものを感じた。
アイツがこの部屋にいて仕事が捗ってた理由が、急に分かった気がした。