……つい、涙が出てしまいました。

緒方さんの話を聞いてると、やっぱり自分じゃなくても良かったんだ…と思って。

「すみません。何でもないですから」

切るように手を離して逃げた。
何処かに隠れようかと思って辺りをキョロキョロ見回したけど、館内は狭すぎて逃げる場所もない。

結局…諦めるようにカウンターに座りました。
こっちからも向こうからも見える場所。
でも、仕方ありません。他に行く所ないんだから。

「はぁ…」

大きくため息をつきました。
私の顔を見て、緒方さんは驚いたように息を呑んでた。
でも、敢えて追いかけてはこなかった。

(…当たり前よね…急に泣かれても困るもん… )

昨夜のことが思い出された。

いつものようにルナがウチに来て…


「レイさんって、やっぱステキ!」

目をキラキラ輝かせて言うもんだから、何があったの?と聞いてみた。

「今日の食事のリクエスト、ラーメンだったの!しかも濃厚トンコツ味の!」
「濃厚トンコツ味のラーメン⁉︎ 」

(なんで、そんな相当煮込まなきゃいけないもの…)

どうしてなんだろ……と一瞬思いました。
あの緒方さんの考えることにしては、あまりにも突拍子過ぎるから。

「それでね、考えたの!これは私に対する試験だって!」

ルナはどうしたらいいか迷って、単純に(あっ、そうか!)と思ったそうです。

「レイさんもたまには変わったものが食べたいんだろうと思って、コンビニへ行ったの!そしたら売ってあるじゃん!ラーメンが!」
「…まさか…カップ麺買ったとか…」
「そう!その通り!」
「ええーっ!」