ストーリーを説明しながら、いつになったらそんな時間が持てるんだろうと考えてた。

俺の自由になる時間。
そんな時間が、もしできたとしても、今なら眠っておしまいになりそうだ。

(今朝みたいに、きっと眠りこけてしまう…)

慢性の睡眠不足。
体を壊さない方がおかしいくらいの状況。
そのおかげで、あいつにはぶつかるし、棚はグラついて本は落ちてきそうになるし…。



………今朝のことを思い出した。

本を押さえた瞬間、フワッ…と花の香りに包まれた。
奴の髪がすぐ間近にあって、その香りが鼻をくすぐった。

ドキドキしながら離れた。
奴と目が合って、話しだそうにも話しづらいものを感じた。

知らん顔するような態度をとった。
俺の背中を見ながら、あいつは何と思っただろう。


(…もしかして、それを怒ってるとか?…)

ぶつかってきてもちゃんと謝りもしないで…と、そんなことを思ってるのか?

(潔癖性だと、妹が言ってたしな…)


…妹の方は、似ても似つかないくらい、騒がしい子だった。
アシ達は皆、上機嫌であの子を部屋に引き入れたけど、俺としては迷惑だった。
悪い子ではないと思う。
だけど、どうにもあの甲高い声が頂けない。

寝不足の頭に響く。
反響して、ついイライラする。

それにあの叫び声。
要らないところばかりが、あいつに似てる。


(…おかげで何かあったのかと思って、飛び起きたじゃねぇか…)

不覚にも取り乱してしまった。
相手も確かめずに、出てきたヤツを抱きしめてしまった。