お昼休み、病院へ行った。

潰れた水疱に看護師さんが薬を塗る。
左手の中指と薬指。
特に重傷だった箇所。


「結婚する前でなくて良かったわね〜。これが式前とかだったら、危うく指輪が通せなくなるところよ⁉︎ 」

「……そ…そうですね…」

話を合わせる。
それを言われると虚しくなる。
25歳になって彼氏の一人もいない女なんて、私くらいのものだろうから。

ペタペタ…と塗り付けられる軟膏は、白っぽくて伸びがいい。
私の持ってる薬とは、やっぱりどこか違う。



『…滅多にあれこれ塗らない方がいいわよ。貴女は女性なんだから…痕が残ったら大変でしょ?』

昨日、女医さんに言われた。
皮膚疾患全般に効く薬なんてないのよ…と教えてもらった。

『騙されないようにね』

笑われて、怒ってた緒方さんを思い出した。

『痕が残っても知らないぞ!』

捨て台詞のように言ったのは、本気で心配してたからだ。
申し訳なかったな…と思いながら帰ったのに、結局、昨日は謝ることもできなかった。


治療が済んで図書館へ戻る。
その道すがら、本屋さんの看板が目についた。

(そうだ…!この機会にどんなマンガを描いてるのか調べてみよう…!)

思いたって中に入った。
ズラリと並んだ漫画雑誌の中から、ソットーしそうな漫画を見つけ出す。