翌日、午後から休みをもらって病院へ行った。
…朝、いつも通りに出勤したら、怖い顔した緒方さんに、
  
「病院へ行ってこい!」

…と怒鳴られた。


「あ…あの…でも…今朝は痛みも減ったから大丈夫です…」

ビクビクしながら反抗してみた。
巻いてもらった包帯を、もう少しこのままにしておきたかった。

「アホか。あんな薬つけただけで良くなるか!さっさと病院行って、まともな薬つけてこい!」

次第に言葉が荒くなる。
夜中とはまるで、別の人みたい。昔読んだことのある、『ジキルとハイド』のようです。


「…じゃあ…午後から行きます…」

あくまでも抵抗してみる。
さすがの緒方さんも、すっかり呆れ返りました。

「勝手にしろ!痕が残っても知らねぇぞ!」

捨て台詞でおしまい。


(…良かった…)

ホッとして仕事を続ける。
返却されてきた本を棚に返そうと、手を伸ばしたら……

「…待て」

静かな声がして振り返りました。
無愛想な表情を浮かべたまま、緒方さんが近づいてきます。

「本なら俺が片付ける。友坂さんは、カウンター業務に専念して」
「…は…はい…」

ひょいと持ち上げた本の束を、軽々と持ってく。
痛みをガマンしながら仕事をしてたのを、彼はばっちり見てたみたいです…。


一冊一冊、あるべき場所へ本を戻してく。


(…置き場所…ちゃんと知ってるんだ…)

ここにある本たちは、一見デタラメに置かれてるようで、実は意味のある置き方がされてる。
それを、この二代目館長さんは、きちんと把握してるようでした。