恋する時間を私に下さい


……部屋の中に『屍』を見つけました。

一体ではありません。
五体です。


「うっ…」
「ううっ…」


死んでるのかと思ったら、生きてるみたいでした。
意識がモーローとして、まるで死んでるように見えたんです。


「あの…緒方さん、この人達は……?」

仰け反りながら、伺いました。
側に立ってる彼も、いつもとどこか雰囲気が違います。

目はどんよりと落ち窪んでて、髭は伸ばし放題で、髪は所々グシャと縮んでて、着ている服には汗の臭いが染みついてる。
そんな状態の彼は、平たい薄いレンズの奥から、ジロッと私を睨みつけました。


「…いいから…なんでも早く作りやがれ!」

ドスを効かしてたった一言。
その途端、そこへ倒れ込みました。


「きゃああ!緒方さんっ!!」

訳が分からないまま叫びました。
揺り起こすと、緒方さんのお腹から…

「きゅぅぅぅぅ…」

子犬の鳴き声のようなものが聞こえました。



「めし…」

「はっ……?」

遺言かと思って聞き返しました。
緒方さんの手が、震えながら伸びてきます。

「緒方さんっ!」

映画のワンシーンみたいに、死にゆく兵士を見守るような気分で、握りしめました。
緒方さんは、最後の力を振り絞るように、声を出して…。


「……めし……作れ……」


「へっ……⁉︎ 」


(めし…⁉︎ …めしって…『飯』のこと⁉︎ )


「あ、あの…もしかして、ご飯……ですか…⁉︎ 」

確認を入れてみた。

「そ…そうだ…」

起き上がろうとする彼を支えようとしたら、ぎゅっと手に力を入れて……