(くそっ…!)

ネームをやりながら、何度、(描かねぇ…!)と思ったかしれない。

それでも俺の所に集まってくるこいつらの事を考えると、思いきった行動にも出れず、結局今も、ボーイズラブの連載を続けてる。
…しかし、それは最近、確かに俺の心を壊してる。

職場の女を部屋に引っ張り込んで、家事一般任せるだけじゃなく、俺が読みたくても読めない本をそいつに読ませてみたり、観たくても観れない映画を見せたりして…さも自分が体験したような満足感を得ようとしてる。


…完全に歪んでる。
それは一番、自分が分かっちゃいるんだけど…


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「……お疲れですか?」

話しかけられる声に目を覚ました。
…俺の前に女がいる。

小さな二重瞼がパチパチ…と瞬く。
首を傾げ、覗き込むような体勢をとってる。

(この体勢は…)

漫画の中のワンシーンが頭に浮かぶ。
ソフトラブの代表格。

『おねだりキス』のポーズだ。


「…お前…り…」

『リリィ』…

そう呼びそうになって、慌てて口を閉じた。
名前を呼ぶと、こいつはすぐ泣く。

履歴書を持って来た時、文字を見ながら(当て字か…)と呆れて読んでみたら、ボロボロ…と泣き出した。


「嬉しくて…」

…泣きながら笑ってた。

何がそんなに嬉しいのか、その時は不明だったが……

部屋に引っ張り込んで、家事一般やらせ始めた頃、理由が分かった。