「モデル⁉︎ …そんなの、その辺にウロウロしてる奴に決まってるだろ!」

本当は自分の図書館に本を借りに来る奴らなんだが、話す訳にもいかねぇからごまかした。

「…その辺にいる美形がモデルだとしたら、あの界隈に行かねーと会えねーな!」

アシの中で一番若いアラシが話し始める。
こいつは大学浪人中のくせに、修羅場となると必ず俺の所へやって来るバカな野郎だ。

「アラシ、お前ちゃんと予備校通ってんのか⁉︎ 」

あの界隈とやらで遊んでんじゃねーだろうな…⁉︎ とツッコミを入れるのはコウヤ。
ここへ来る五人の中で、多分、一番マトモな男だ。


「…通ってるに決まってるだろ⁉︎ オレだって、そう何年も浪人したくねーよ!」

アラシは一番年下で、末っ子みたいな存在。
皆に可愛がられてイジられる、損な役回りばかりだった。


……俺の所に集まるアシ達は、どこか一風変わってて、漫画のキャラにしたらオモシロイだろうな…と思う奴らばかり。
でも、俺が描きたい漫画は、読者にはウケないんだ…と加藤さんに言われてしまった。

「僕も描かせたいのは山々なんですよ…」

力不足ですみません…と肩を落とす。
ここ1年くらいの間に、俺は何度、この連載をやめさせてくれ…と頼んだかしれない。



「……描きたい漫画じゃないんです!」

力強く説明してもダメだった。

『オガタ レイ』の名前は、ボーイズラブ系の代名詞みたいになってしまってたから。