新人漫画賞に輝いた半年後、パタ…と、売れなくなった。

苦し紛れに描いた作品を、マニア向け雑誌にでも載せてもらおう…と、編集部に持って行ったら、加藤という編集者に乗せられて、在ろう事か一流漫画雑誌の表紙を飾る連載ものになってしまった。

「いやー、丁度大きな連載ものが終わったばかりで弱ってたんですよ!コレならその穴が埋まると思います!大ヒット間違いなしですよ!」

(…マジか…⁉︎)

呆気に取られる俺のことを無視して、加藤さんはどんな路線にしましょうか…と問いかけてきた。

「どぎついものは雰囲気に合いません。ソフトラブ系にしてみたらどうかと思うんですけど…」

「ソフトラブ⁉︎ 」

オエッ…となりそうだった。
俺の描きたいものは、そんなものじゃない。

(そんなもの…描きたくもねぇ…!)

喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

(ワガママ言ってる場合じゃねぇ。漫画で売れてやるって、決めたじゃねーか…)

「イイですね。ボーイズソフトラブ!描いてみます!」

(口から出まかせだろうが何だろうが、とにかく漫画で一発当ててやる…!)



………その夢は、確かに叶った。
ただし、自分が描きたい路線とは違う…。


「…レイさんの描くオトコってさ、魅力的なキャラが多いですよね⁉︎ …モデルは誰なんですか⁉︎ 」

トーン貼り担当のトドロキが聞く。
相変わらず外科医を目指してはいるが、留年を重ねてる愚かな野郎だ。