「リリィ…」

ボソッと呟かれた言葉を聞いて、心臓が跳ね上がった。
走り出しそうな思いに胸を弾ませて…

「はい…」

…と、小さく返事をした。

二代目館長さんは、ちらっとメガネの隙間から私を見て…

「採用します」

…ハッキリした言葉を頂いた。



……それを聞いて、私がどんなに嬉しかったか、想像できる⁉︎

そこらじゅう走り回って、「やったぁー!!」って、叫びたいくらいだった。

手には汗をいっぱいかいて、胸はドキドキ言いっ放しだった。
何より、耳について離れなかった声が……


「リリィ…」

二代目館長さんの声は、頼三さんにソックリだった。
私はものすごく舞い上がってしまって、嬉しくて嬉しくて、とうとう泣き出してしまった…。


「えっ⁉︎ …あの、どうしたんですか⁉︎ 」

館長さんは大慌てで席を立った。
そんな彼に頭を振って…

「なんでもありません…嬉しくて…ただ、嬉しくて……泣いてるだけです……」

…理由を聞いて、ただ呆れた様な顔をしてた。
自分でも家に帰ってから、大いに反省した。

でも、この時はホントに嬉しくて。ただ有難くてーーー


……今のような日々が訪れるなんて思いもしなくて、ただ、幸福感でイッパイに満たされてた。



ーーーその後も、私はずっと同じ図書館で働いてます。
二代目館長の『緒方礼生』さんは、今も変わらず、声だけは頼三さんにソックリ。
でも、その素顔は……