「…何もなくて…良かった……」

朝帰りした娘を叱る親のような礼生さんの態度は、少し笑えました。
でも、笑う訳にはいかなくて、そ…と背中をさすった。

「ごめんなさい……本を読みたくなって……」

途中から理由が変わったことは話しませんでした。
コウヤさんに会ったと言ったら、二度と夜中に出歩いてはいけない…と言われそうな気がしたから。

「アホ…そんなの昼間に幾らでもできるだろ……」

その為に、鍵を渡したんだ…と言われた。
ルナにけしかけられて、その気になった自分がバカみたいに思えてきました。

抱きすくめられたまま、かぁーと顔が熱くなりました。
その熱を感じたように、礼生さんが離れていった。

ドキン…とするくらい顔が近くにあって、その眼差しはやっぱりまだ怒ってそうで……


きゅぅぅぅん…と胸の音が鳴り、彼が大好きだ…と思った。
恋する時間の始まりを感じながら、腕の中で目を閉じた。


……頭の中に、いろんな出来事が浮かんできました。

でも、それは全て、深いキスと一緒に…溶けていったーーーー……






FIn