「バカか!お前は!!」

裏口のドアを開け、「おはようございます」と挨拶した途端、頭の上から怒鳴り声が降り注いできました。

ビクッとなる私の所へ、礼生さんが駆け下りてくる。

「一体、何時にうちに来たんだ!!」

髪の毛はボサボサのまま。
もしかしたら、顔も洗ってないんじゃないか…と思いました。

「1時前くらいだと…思いますけど……」

0時頃、マンションを出た。
コウヤさんに会って少しだけ言葉を交わして、このビルにやって来たから、そのくらいのはず…。


礼生さんは鬼のような形相をしてた。
はぁ…と、自分を落ち着かせるように息を吐き、私のことを睨んだ。

「すみません…明け方近くまでいたんですけど…礼生さんがあまりによく眠ってるものだから……」

朝ご飯、食べてくれました?…と、なんとか笑って聞きました。
礼生さんは怒った表情のまま、

「…ああ、美味かった」

とだけ答えた。


「良かった…」

悪気もなく、ただ、彼に会いに行っただけなのに、礼生さんにはどうも、それが気に入らなかったみたいで……


「リリィ……」

怖い声で名前を呼ばれました。
ぎくっとしながら、「はい…」と小さく返事した。


……ぎゅっと抱きしめられた。
剃り残したヒゲが頬に当たり、チクッと痛みが走った。


「…頼むから……来るなら来るで…電話くらいしてこい……」

泣きそうな声が聞こえた。
起きた途端、お味噌汁の香りがして、礼生さんは驚くよりも先に、恐怖を感じたんだそうです。