BLを描いてる理由を「売れる為だ」と説明してた。
くだらない理由に(アホらしい…)と思った。

思ったことをポロリと口にする悪い癖のせいで、レイからは毛嫌いされたような気がする。
でも、コウヤが起こしたあの事件以来、レイの態度は少しだけ柔らかくなった。



「…巡回、頼んでくれて…ありがとな……」


世話係をしてた女がコウヤに切りつけられて入院した時、一度だけ礼を言われた。
切りつけられる前日に、コウヤの様子が変だと思ったから頼んだだけだった。


「…お前の為じゃねぇよ……」


あの子のことが気になってたからだ。
胃袋を掴まれた……そう表現してもいいくらいの感情だった。


自分から告るなんてことはしたくなかった。
そんな事しなくても、女の方から言い寄ってくる毎日だった。
だから、少しは入り込めるかな…って甘い考えもあった。
でも、あの子はいつも、レイばかりを見つめてた…。



……入り込める余地なんて、最初からなかった…。


「手ェ出すなよ……」

コウヤに忠告したのは、奴の為を思ってじゃねぇ。
自分自身に言ったつもりだった。

言葉や態度に出さなくても、レイがあの子を大事にしてるのは分かってた。
あいつも俺と同じ、胃袋を掴まれた仲間なんだ……。


ーー結局のところ、俺は漫画でも女でも、レイには勝てなかった。

こんなカッコよくもねぇ奴に、俺はとことん負けたんだ………。