……レイを手伝うようになったのは、大学四年の秋ーー

久しぶりに登校した大学で、友人がアシスタントを探してた。

「『オガタ レイ』っつー漫画家なんだけど、ボーイズラブ系の漫画描いてるらしくて…」

ギョッとして振り向いた。久々に聞いた名前を、忘れてはいなかった。


「……その話、詳しく聞かせてくれよ」

唐突に話しかけられた友人は驚いたような顔をしてた。
滅多と学校に来ない俺が、いきなり聞いてきたのが珍しかったらしい。


「ああ…あのな……」

漫研に入ってるそいつは、他の漫画家のアシスタントをしてた。
ボーイズラブ界の新星として名を馳せてたレイが、多忙のあまり、アシスタントを増やしたい…と担当者に相談を持ちかけたんだそうだ。

「オレは今んとこで手一杯だからさ、誰かやってくんねーかな…と思って……」

『美大生=絵が描ける』と、出版社の連中は軽く考えてるらしい。

…確かに絵は描けるかもしれねぇ。でも、絵筆が違う。
未経験者じゃ役にも立たねぇ。……そのことは、俺が一番知ってる。



「……俺が手伝ってやるよ」

ニヤリと笑って引き受けた。
気になってた奴の顔を拝めるのかと思ったら、妙に嬉しくもあった。