恋する時間を私に下さい

ガラスのローテーブルとパソコン用のデスクが、ドアの右横に置いてあった。
それ以外は何もない。
殺風景な部屋の中で、私は暫く動けなかった。


礼生さんはベッドの中で、ピクリとも動かず熟睡してるみたいでした。
ソロソロ…と近寄り、顔を確かめてみた。


久しぶりに見る寝顔は穏やかだった。
前髪の隙間から見える眉間にはシワもない。

いつか見た夢のように安心しきったその寝顔は、まるで子供のようでした。


きゅっ…と胸が詰まった。
溢れ出しそうな喜びと嬉しさで、すぐにでも起こしたい気分になる。

寝グセのついた前髪が、額の上でカールしてる。
真っ直ぐに伸びた眉毛は太くもなくて、意外にまつ毛が長いんだと知った。

細くて丸い鼻の頭をチョン…と指で触った。
軽く触れたくらいでは起きもしない人の名前を、耳元で呼んでみました。


「礼生さん…」

ピクッと微かに眉が動きました。
でも、目は開くこともなかった。

折角見つけたのに…という気持ちと、寝かせてあげたいと思う気持ちの狭間で揺れ動いた。
彼に伝えたい言葉は沢山ある。
どうして引っ越したのかも、聞きたかった。

ベッドの上に両手を乗せ、頭をもたげました。
彼の目が開いた時、真っ先に自分の顔が見れるようにしてみた。


(こうしてると、コウヤさんの部屋にいた時のことを思い出すなぁ…)

あの時の礼生さんは、死人のような顔をしてた。
疲れきって、憔悴しきって、顔色も悪くて頬もこけてた。