身も蓋もない言い方をするスグルさんのことを、皆はレイさんの一番のファンのくせに!…と笑いました。

「ウッセー!」

テレたスグルさんは、肯定も否定もしなかった。
結局、私よりも皆の方が、礼生さんの漫画の良さをきっと分かってるんだ…と実感させられた。

駆け出しのファンである私は、まだまだだな…と痛感させられる。
その私の言葉を真に受けて、礼生さんは頑張ってるんだと思い知らされました。



電車が駅に着いて、大慌てで降りた。
改札口をすり抜け、いつも通ってた道を走り出す。
止められない足元を気にしながら見上げた視界の中に、レトロビルが入ってきました。


……あの大学四年生の早春の日、今と同じような気持ちであそこへ向かった。
中へ入って、書いたばかりの履歴書を渡し、「どうかお願いします!」と、頭を深く下げようと思ってた。
頼三さんに似たあの人は、なんて言ってくれるだろうか…と思いながら、胸を弾ませた。


……今も、いろんな思いを胸に走ってる。
『会いたかった』や『マンガ読みました』とか、どうでもいい事も全部ひっくるめて。

ひたすら、恋する場所を目指してる。
あそこで過ごした全ての時間が、今は何より愛おしい。



『OーGATA図書館』のロゴは相変わらずな古さで、私を迎えてくれた。
磨かれたドアのガラスが、美しく輝いてる。
電気の消えた店内には人影もなく、誰もいないみたいでした。