徒歩15分の距離をダッシュして、駅へ向かう。
頭の中では、礼生さんに伝える言葉がグルグルと駆け回ってる。

ホームに着いてすぐ、入ってきた電車に乗り込みました。
息を切らしながら汗を拭く私に、周りの視線が集まる。
暑くて、どんなに汗をかいても取れないスカーフに、もどかしさを感じる。


包丁の刃が当たったせいで、私の髪は不自然な感じに切れてしまった。
傷を縫合する為に短くされてしまった髪の毛は、大嫌いなショートカットになった。
首が長いのがコンプレックスで、これまで絶対に短くしたことなどなかったのに。

(大誤算…これだけはコウヤさんを恨む…)

残暑の厳しさが残る中、電車に揺られる。
同じ車内に乗ってる人達一人一人にもあるであろうドラマを想像しながら、この最近のことを思い出してた。


礼生さんは、私に会いに来るのを遠慮してるみたいだった。
ファンレターに書いてあったことが、私の答えだと思ってくれても良かったのに、それに答えれない自分を恥じて、敢えて会わないと決めた。

会えない時間が募ってくのは寂しかった。
気持ちは繋がっても、何も変わらない日常を思うと辛い。
時々、様子を見に来てくれるアシさん達の話では、礼生さんの漫画に対する姿勢は変わったそうだ。


「真剣でさ…特にネーム作りにえらい時間かけてた」
「今までみたいにできないからって、イライラしてね〜よな」
「楽しんでる…?そんな感じ…」
「今更ながらのアホだよ……」