『OーGATA図書館』

そこを知ったのは高校時代の頃。
文芸部の先輩から、『面白い図書館があるのよ』と教えられたのが始まり。

繁華街の外れに建ってるレトロビルの1階にある小さな私立の図書館で、古いロゴ文字の看板が目印になってた。
館内はものスゴく狭くて、五人も入れば、いっぱいになるくらいの広さ。
教壇のように少し高い場所に貸し出しカウンターがあって、いつもそこから館長さんの声が聞こえてた。


「いらっしゃい」

初めてそこへ行った日も、頭の上から声がした。

「こんにちは〜!今日は部活の後輩、連れてきました!」

楽しそうに話しかける先輩を尻目にして、私は店内を見回した。

所狭しと並べられた本棚には、ビッシリと本が並んでいて、所々、山積みにされてたり、平積みになってたり。
ホントは読書コーナーなのでは…?と思われる机の上には、平たく本が置かれてある。

その本の表紙には、全てコメントが書かれていて、面白い…と言うよりは、少しおかしな雰囲気が漂ってるとこだった。

館長の『緒方頼三(おがた らいぞう)』さんは、当時79歳のお爺さん。
年の割にダンディな方で、私の初恋の人…と言っても、過言じゃない。
サンタクロースのような風貌をしていて、白髪に白ヒゲ、小さな丸いメガネを鼻にかけるようにして、こっちを見るのがクセだった。


「…リリィさんは、本当に本が好きだね」

足繁く通ってくる私のことを気に入ってくれて、「リリィさん」と名前で呼んでくれた。