恋する時間を私に下さい

翌日、大学のゼミへ出かける前に、ルナは病室に立ち寄りました。

「二冊しかないけど、どっちも面白いよ。あんま人気のないマンガだったけど、私はどっちも好きだったな〜」

手渡された単行本には、カバーが掛けられてた。
表紙が私の苦手なアダルト系だったから、ぱっと見、何読んでるか分からないようにした…と、ルナは話した。

「他にも読みたいモノあったら言ってみて。持って来るから!」

「行ってきま〜す!」と手を振る妹を見送って、本を手にした。
ルナにしては扱いのキレイな本の状態に、満足しながら表紙を開いた。

美形の男子が描かれた扉絵。
人物もさることながら、背景に描かれてある花の描写が素晴らしかった。

タイトルの下に印刷された文字。

『オガタ レイ』

男性だか女性だか分からないような感じのペンネームに、胸を躍らせながらページを捲った。



礼生さんのマンガは、図書館に勤める司書の目線で描かれてた。
一人の男性司書が、通ってくる女性に恋をする。
その女性には影があり、その影の正体を確かめながら、恋する気持ちが深まる話。

背景の一つ一つに、『OーGATA図書館』があり、私はそれを読みながら、まるで自分のことのような錯覚に陥ってた。

恋する司書は私で、想われる人は礼生さん。
狭い図書館内を飛び出して、外へと動き出していく展開を見ながら…


(上手い…)

素直にそう思った。
これまで読んだこともないマンガだったけど、これは、読み流すにはもったいない気がしてしまった。