一度決めたら、なかなか変わらないのがうちの家系だった。

俺は学校の図書館で「マンガの書き方」という本を借りて読みだした。
デッサンのやり方からコマの割り振りの仕方、ペン先の種類や紙の種類まで、いろんなコトが書かれてある本だった。


『…何を読んでるんだい?』

ジイさんが覗きこんだ。
オレが広げてるページを見て、『漫画の本か…』と呟いた。

『レイ…漫画もいいけど、本はもっといいぞ!』

熱のこもった言い方に、視線を上げた。

『本の中にはドラマがある。絵のない分、いろんなことが想像ができる。読み手一人一人に世界があるように、本の中に出てくる人達にも世界がある…』


当時のジイさんは、本の良さを熱心に語ってたと思う。
それを俺は、どうでもいいような気持ちで聞いてた。


『レイ…図書館を開いてみようかと思うんだが…』

ジイさんの目は、真剣だった。
小学生の俺には、興味のないことだったけど……

『ふぅん…やれば?』

テキトーに返事した。
その図書館を『継いでくれないか?』と聞かれたのは、高校の頃だった。

『…マンガ家になるって言ったろ⁉︎ 』

一本気と言えば聞こえはいいが、ただの頑固者だった。
子供の頃からの夢を追いかけてる俺にとって、『OーGATA図書館』は取るに足らない存在だった。

『図書館の仕事をしながら、漫画も描けばいいじゃないか。図書館に来る人達のことをいろいろ想像してみろ。いいものが描けるかもしれないぞ!』