「…じゃあね!リリィちゃん!」
「また美味いもん食わせてね〜!」
「お大事に!」
「そのバカに襲われんなよ!」


最後の毒舌を効かせて、スグルさんがドアを閉めました。

礼生さんはブツブツ言いながら、最後に出ていった人のことを怒ってる。
その様子を見ながら、ある意味スグルさんと礼生さんは、ホントのライバルなのかもしれないな…と思ってしまった。


「……礼生さんのアシスタントさん達って…皆いい人ばかりですね…」

胸の奥に、コウヤさんのことがありました。
あんな形で歪んでしまったけど、彼はきっと、真剣に礼生さんのことを好きだったんだと思う。


「…私…コウヤさんのこと、傷害事件として訴える気にはなれません…」

男だって女だって、好きな人には振り向いてもらいたい。
相手が手に届きそうにない人ほど、きっとその思いは強くなる。


「……人がいいな。お前は…」

椅子に座り直して、礼生さんが近づきました。

「そんなヤツだから、俺が側にいねぇと危ないんだよ…」

「ありがとな…」と肩を抱かれた。
さっきの続きをされるのかと思って、つい身を固くしてしまった。

「……だから…そんなビクつくなって!まだ何もしてねぇだろ…!」
「そ…そうなんですけどぉ……」


真っ赤な顔でビクつくヤツを、俺は思いきり笑ってやった。


…コイツと出会って良かった。
この女神のことを、俺はずっと大事にしていこう。