恋する時間を私に下さい

「お願いします…」

目の前で頭を下げる礼生さんを眺めてました。
何が起こったのか分からず、ポカン…としてしまった。


ルナがニヤニヤしてる。
母は私と同じで、唖然とした顔をしてる。
父は神妙な顔つきで、礼生さんのことを見つめ返した。


「…二人のことだから、二人に任せますけど……百合、お前はそれでいいのか…⁉︎ 」

振り返って聞かれた。

「えっ…⁉︎ あの……」

戸惑う。
何も始まらないうちから結婚話に発展して、思わず身構えてしまった。

「…んもう!お姉ちゃんてば!…テレてる!!」

ルナが体を押しつけた。
強い力に倒れ込みながら、彼の顔を見た。


(ホントに…?夢とかじゃなく…?)

弱々しい力で、頬をつねった。
さっきの優しいキスの答えが、今の申し出だとしたら……


「い…いいです……」

そう答えるよね…⁉︎ 多分、フツウは……。


「あ…あの……とりあえず…退院してからにして…いいですか……?」


ガクッと礼生さんがうな垂れた。

(ごめんなさい!ごめんなさい!…私……意気地が無くて……)

ハラハラしながら彼に視線を送った。
呆れたような顔が返ってくる。

その表情は怒ってもなくて、むしろ、どこかほっとしてるみたいだった…。


「そ、そうだよな。…まずは、退院する方が先だな!」

安心したように父も言葉を合わせる。
ムクれながら文句を言うのはルナだけ。
私達は心の中で、やっと動き始めたばかりの時間を噛みしめたかった。