恋する時間を私に下さい

頭を下げる父親の声に、俺の方が恐縮した。

「悪いのはこっちです。娘さんに傷を負わせて……」

人を見る目がなかったばかりに、こんな事になってしまった。
一番信頼してる奴だからこそ…なんていう言葉は、この際、通用しない。

俺は漫画家として、一番大事なことを見失ってた。
売れることや有名になることばかりを意識して、客観的に物事を見ることを怠ってた。

大事なことは、売れることや有名になることじゃない。
一人一人に共感し、それを絵と言葉で表現することだ。


「…お父さん、心配しなくても大丈夫よ!緒方さんは、お姉ちゃんをもらってくれるハズだから!」

傷が付いても行き先はあるの!と、妹は泣き止んで言った。


「えっ⁉︎ それは、どういう…」

「やっ、いえ…その……」

(くそぉ…まだ何も始まってねぇのに…)

まいったな…と彼女を見た。

真っ赤な顔でこっちを見てたヤツは、素知らぬ顔で視線を逸らした。

髪の切られた首筋が綺麗だった。
その横顔がいつでも見れるなら、まぁそれもいいか…と思った。


(…そもそも最初から、そのつもりだったしな……)

肩の力を抜いて、彼女の父親に向き直った。
傷の有る無しに関わらず、誠心誠意込めて、彼女を守り抜こうと決めた。


「こんな所で言うのもなんですが…リリィさんと結婚させて下さい。しがない図書館経営しかしてない俺だけど…全力で守り抜きますから…」