「…コウヤです。先生の作品に憧れて、是非アシをさせて欲しい!と編集部に泣きつきました!よろしくご指導願います!」
「お…おぅ…」

迷いながら、そう返事した。
コウヤと名乗るそいつは、三人の中で一番年上の27歳。
セミプロとして活躍してる奴で、いろんな漫画家のアシもやってた。

……三人のアシスタントを抱え、俺は漫画家として順調に仕事をこなしてた。
この頃は『OーGATA図書館』の館長も、併用してすることが出来てた。


…だけど、この最近の忙しさはなんだ!!
連載以外にも、読み切りだの番外編だの…と余計な仕事がバンバン入ってくる。
売れるのは有難い。
でも……


「…ううっ…もう…いい加減にしてくれーーつ!!」


大声で叫んで目が覚めた。
寝ボケた耳に入ってきたインターホン。



「……はい…」

思いっきり不機嫌に出てやった…。
ところが、相手は呑気そうな感じで話してきやがって……

「あの…今日、隣に引っ越してきた友坂と言います。ご挨拶に伺いました…」

若い女の声に如何わしさを感じた。

「はぁ…⁉︎ 」

(引越しの挨拶⁉︎ …今時する奴がいるのか⁉︎ )

…疑わしいもんだ…と、覗き穴から見た。

長いストレートヘアが見える。
小さなダンゴみたいな鼻につぶらな二重の瞳。
髪を耳にかけた顎のラインは綺麗だ。
おまけに唇は薄っすら紅い。


(こいつは……)

ガチャ…とドアを押し開けた。

目の前に立ってるのは、うちの図書館で働く女。

『友坂百合』
『百合(ゆり)』と書くのに、『りりぃ』と読むらしい。