恋する時間を私に下さい

「大事にされちゃって…!羨ましい人!」

記録用紙の挟まれたバインダーを抱えて出てく。
それと入れ違いのように入ってきた医師が、私に問いかけた。


「…気分はどうですか?」

邪魔そうに礼生さんを一瞥した。

「出血が多かったから、輸血をしましたよ…800ccくらい」

どれ位の多さか分からず頷いた。
医師は私の心音を聞き、手首で脈を計った。

「傷口は浅かったけど、首筋だから。頸動脈もあるし、下手すると命に関わるところでした…」

耳たぶの下辺りを押さえて、ここを切ったと示してくれる。

「不幸中の幸いでしたね…」

安心させるように、笑みを浮かべて出て行った。
残った看護師さんが、側で眠る人に声をかける。

「もしもし⁉︎ そろそろ起きませんか⁉︎ 彼女、目が覚めましたよ!」

遠慮もなく背中を揺すられた人が起き上がる。
垂れた前髪が、顔の前で緩いカーブを描いてる。
閉じてた瞳を開けたくても開けれないみたいで、暫くそのままの状態でいた。

「呆れたカレシね…そんなに眠いのかしら…」

看護師さんの声に苦笑した。
礼生さんがこれまでどれだけ睡眠不足でいたかを知らないんだ…。

「ごゆっくり。後で部屋変わりますから」

手を振り、出てく人に頭を下げた。
体を起こしたものの、ユラユラしながら礼生さんは眠ってる。
器用なもんだな…と思いつつも、その様子を黙って見てた。