ぼんやりと天井を見上げた。
はっきりとしない頭の中は、考えようにもまとまらない。

「大変だったわね…。包丁で切りつけられるなんて……生きてて幸いよ…」

看護師さんの声でハッ…とした。
強張った顔のコウヤさんの手に、鋭い刃物が握られてた。

(……礼生さんは……?)

振り下ろされる前、背中を押された。
振り向いた彼に刃物が降ってくるのが見え、無我夢中で抱きしめた。



「やめてぇぇ……!!!」


命に替えても守る…と決めた。
何があっても、側から離れない…と決めた。


「…あなたが庇ってあげたから、この人は無傷で済んだのね…」

看護師さんがクスッと笑った。
視線を辿ると、ベッドサイドに寝てる人がいる。

髪の毛がフワフワしてる。
無防備で、隙だらけな感じ。
その人のことを、看護師さんがこう言った。

「あなたを見守りたいって言ってたわりに目が覚めないなんて…ザンネンね……」


クスクス笑う看護師さんの声に、「う…ん」と唸る声がした。
眠そうに向きを変え、顔がこっちを向いた。


(…礼生さん…!)

前髪の隙間から閉ざした瞼が見える。
付き添ってた頃よりも赤みの戻ってる顔に、ほっと胸を撫で下ろした。


「貴女が目を覚ましたというのに…寝てちゃ駄目ね…」

揺り起こそうとする手を止めた。

『寝かせてあげて下さい…』

声は音が出なかったけど、口をパクパク動かした。
そんな私を見て、看護師さんが笑い返した。