「二度と傷つけない……怖い思いもさせない……だから……どこへも行くな……!」



命令口調の彼が泣いてた。
その涙を手で拭って、夢じゃないんだ…と知った……。



「館長さん…!」


振り向いた先にいる人のことを呼んだ。
その人に向かって、ごめんなさい…と謝った。


「私…もう一度、戻ります。この人の涙を……礼生さんの涙を……乾かしてあげないといけないから……!」

できることは無くなったと思う。

でも、まだ…やり残してることがある……。



『いいんだよ…。最初から、そのつもりだったからね……』


頼三さんは穏やかな顔をして笑った。
光り輝く姿が眩しくて、ぎゅっと目を閉じた。

礼生さんが私の体を包んだまま、力強く抱きしめる。
その体温を感じて、生きてるんだ…と実感した…。


(…もう…どこにも行かない……この人が……私を離さない限り……)



霞のような世界での出来事。
それを人は……


夢と言う………。