『ありがとう』を何度言っても足りないくらい。
彼女のことを崇め倒しても、きっと追いつかないくらい。

「…だけどな…俺はまだ…何も返してないぞ……」


ぎゅっ…と手を握りしめて離さなかった。

刃物を前にしても、俺の側から逃げなかった時と同じ。
ジイさんを前にしても、俺はこの手を離さないと決めた。


「…やり直させてくれよ……お前がいないと…何も始まらないんだ……」


図書館も…恋も…漫画も……

(何もかも、一人でなんか始められるか……)

「…リリィが要るんだ……他のヤツじゃダメなんだ……。お前じゃないと……俺はまたダメになる……」


強引に腕を引き寄せた。

彼女の手に握られてた花冠が落っこちる。
それを拾おうとするヤツのことを、俺はグイと抱き寄せた。

「…拾うな!お前はずっとここにいろ!」

抱きしめる腕に力を込めた。
逃げ出さないように力を入れながら、彼女の耳に囁いた…。


「……好きだ……どこへも行くな……」


腕の中にいろよ。
俺は変わるから。

お前のことも、漫画のことも、『OーGATA図書館』のことも、

何もかも抱きしめて…慈しんでいくから……。


「リリィが欲しい……それをずっと……伝えたかった………」


世界で一番大事なヤツ…。
抱きしめて、離したくないヤツ…。


それを掴まえたら…『守り抜く』と決めた…。