恋する時間を私に下さい

……女性の顔が泣いてた。

悲しそうにまつ毛を濡らして、それでも俺のことをジッと見てた。


(泣くなよ…)

言ってやりたくても、声が出なかった。

ゆっくりと視線を動かす。
長い髪が布団の上に垂れてる。
耳からアゴにかけて、卵のような曲線が描かれてる。
可愛い唇が赤い。

その唇が動いて、俺の名前を呼んだ。

「礼生さん……」


…確かに、彼女の声だと分かった。

指先の感覚が戻ってくる。
その指を動かして、頬を触った。

目から涙がこぼれ落ちた。
その雫を受け止めて、名前を呼び返した……。


「リリィ…」

ぎゅっと力強く手を握られた。
彼女は俺のことを見つめたまま、声を発した。


「はい…」

それだけ言うのがやっとのような感じで、後は泣き声になった。
しがみついて泣き出して、握りしめてた手を離そうともせず、頭を胸に押しつけた。

反対の手で髪を触った。

触れた髪の感触には、覚えがあった。



(………そうか……ずっと、ここにいたんだ……)


優しく髪を撫でながら、こうしてやれば良かったんだ…と思った……。
そうすればコイツは、ずっと側にいてくれるんだ…と分かった。

泣き続ける背中を撫でた。
大きくうねる背中が、息を吸い込む度に膨らむ。
その間隔が開きだして、ようやく彼女は頭を上げた。

グズグズに泣いてる顔は真っ赤だった。
その顔を見て、小さく微笑んだ。