恋する時間を私に下さい

コウヤさんは、朝になって帰ってきました。
期待とは裏腹に、やはり一人だった。


「…スグルさんは…?」

恐る恐る聞いたけど無視された。
まるで、私なんか見えてないみたいに、フラフラと礼生さんのところへ行く。

立ち竦んだまま見つめてる。
その背中が、異様なほど冷たかった。


「コウヤさん…朝ご飯は…?」

一応声をかけた。
無視し続けるコウヤさんにため息が出る。

諦めてキッチンへ行き、お味噌汁を作ろうと、包丁を取り出した時…



「ガタさんっ!」

叫ぶコウヤさんの声に驚いた。
何かあったのかと思い近づくと、薄っすらと礼生さんの目が開こうとしていた。

「…礼生さん!」

側に寄ってく。

開いた目の中は、何も写ってないように、黒目だけがキョロキョロと彷徨ってる。
すぐに閉じようとするのを止めるように、「寝ないで!」と叫んだ。


「礼生さん!寝ないで!」

座り込んで手を握った。
右手を両手で包み込んで、ぎゅっと力を入れた。

「お願い!起きて!」

動きだして……!と願った。

無言のままいるコウヤさんが恐ろしかった。
勇気が欲しくて、震えながらしがみついた。

礼生さんの指先がピクリと動いた。
見返すと、少しだけ握り返そうとしてる。


「礼生さん…!」

頬を近づけた。
指先が伸びて、微かに頬に触れた。

「礼生さん…!ここにいます!」

掌を頬を押しあてた。
礼生さんの手を、自分の手と頬で包んだ。