傘と雨音







おい、岡本(女)!情報不足だぞ。
コイツ、突っ込み早いぞ。



脳内で岡本(女)に訴えるが、それよりもまず目の前の北見だ。






「香川さん、傘無いの?」



私の失礼な名前間違えにも顔を変えず、
素早いツッコミをしてもドヤ顔をせず、

最初から好印象を持てるような笑みの北見。


ニヤニヤとかニンマリとかそんな安いものじゃない。

ニコッと自然で爽やかな笑みだ。





「持ってきたけど、無くなってた」



私がそれだけ言うと、笠立を覗きながら『ああ、盗られちゃったのか』と理解する北見。

学校では置いていた傘を人に持って行かれるなんて珍しくないが、

その人がこの雨を乗り切れて、
持ち主の私がこの雨に困るって状況は気にくわない。





ムスッとした表情をしていると、
北見は笠立から自分のであろう傘を盗り出した。



それを差して帰ってしまうと思っていたが、
北見はその傘を開かないまま私の目の前に何かを出す。