僕は家の階段を上がって

晴の部屋をノックした。


トントン、

「晴。ちょっと話したいんだけどいい?」

ゆっくりと戸が開いた。

頭はボサボサだし、
服もゆるいようだった。


「どうしたの。蒼が来るの珍しい。」


父が亡くなるまでは、

校内でも仲がいいのが有名なくらい

仲のいい兄弟だったのに、

今では1日に1回話すか、話さないか

くらいになっていた。


「母さんがさ、引っ越さない?

って、相談してるんだ。下りてきて

一緒に決めない??」


「僕はどこでもいい。
でも、この家は手放したくない。」


「分かった。それだけ伝えてくる。」



急いで階段を下りた。

正直、こんなに会話したのが

久しぶりすぎて、きっかけは何であろうと

嬉しかったんだ。


僕は、晴から聞いたことを

母さんに伝えて、5年生を終えたら

引っ越すことに決まった。