子犬物語。

 嫌だ! ぼくは一人じゃ何もできないよ! 待って。待ってよ! ぼくを一人にしないでよ!

 一緒にいてよ!!

 スタスタと前を行く猫をメロンは追いかけた。だが猫はこれ以上関わるのを避けたいのか知らぬフリを決め込んでいる。少しも振り向こうとしない。けれどもメロンはめげずに後を追った。
 草原を抜けアスファルトの上を、猫が、その少し後ろをちょこまかと子犬が追いかけていく。
 やがて猫は急に立ち止まると振り向きざま、

「あ~~~っなんなんだよお前はぁー! ちょろちょろと俺の後ろを追っかけてー‼」

 迷惑そうにイライラと叫ぶ。

「あ。やっと振り向いてくれた」

 嬉しそうに笑うメロンを、いぶかしげな猫の瞳が見る。

「?」

「ぼく、メロンっていうの。よろしく」

 天下一品、最上級の無邪気な笑顔を返す。

「はぁ? 自己紹介される覚えはないぞ」

 無敵な笑顔にたじろぎつつも猫が答えると、メロンは笑顔のままけろりと答えた。

「だって、これから一緒に行動する仲だもん!」

「………いつからそんな仲になったんだ」

「さっきぼくを助けてくれたところから」

「……だぁーーーー………」

 がくっと肩を落とすとそのまま口をつぐんでしまった。

「猫の名前は?」

 ねぇねぇなんていうのっ!? なんて目をキラキラさせながら聞いてくる。

「ねぇ、猫の名前っ」

「猫というな、猫と」

 うんざりしたその目は薄い皿ほどにすわっている。

「な・ま・え!」

 しかし当のメロンは猫の心境など気にする風もなく、名前をいうまでしつこく聞いてくるようだった。

「あーうっさい! 俺はシューマイだっ」

 やけっぱちに答える。

「シューマイ……なんだか面白い響きの名前だねぇ」

「ほっとけ‼」

「じゃあ、これからよろしくね、シュー‼」

 尾を振りあらためて挨拶をするぼくに、シューはあきれた顔で空を仰いだ。


 おわり。