「今日の放課後、二階の空き教室に来いよなっ!」

「うん…ん?え、なんで?!」

「来たらわかるって!」

そう言って立ち去る男子たち。

私は『雪村 瑞稀』高校1年生。

ちなみに、空き教室は使っていない教室だからいつも教室の鍵が開いている。


放課後、言われた通りに空き教室へ向かった。

「コホンっ、コホンっ…、ホコリすごいなぁ」

教室はホコリっぽくて、ほとんど物置状態の教室だった。

2、3分して一人の男子が入ってくる。

「わりぃ、待った?数学の中田に捕まってさぁ。」

「いや、待ってない…けど…なんで広瀬くんが…?」

思ってもみなかった人の登場にかなり驚く私。

広瀬くんは少し微笑んで、

「ははっ、俺が雪村に話があるからだろ?」

「そ、それはそうなんだろうけど…思ってもみなかったっていうか…ね?」

広瀬くんがまた笑う。

その笑顔に一瞬胸がドキッとなった。

広瀬くんは、かっこよくて女子にも男子にも人気の男の子。勉強はそこそこだけど、運動もできて性格もいい。女子にも人気…ってことはモテるっていうこと。
一ヶ月に3回くらいは告白をされてる場面を見る。

「あっ、それで話はなんなの??」

本題に戻す私。

広瀬くんは後ろを向いて深呼吸をした。

普通にこっちをみながら深呼吸をすればいいのに…。

そんなことを思いながら見ていると、突然こっちを振り返って私の目の前に近づいて来た。

顔が結構近くて心臓のドキドキが鳴り止まない。

「俺、雪村のことが……好きだーっ!」

広瀬くんが廊下にまで響き渡りそうなくらい大きな声でいった。

「うそ……、うそでしょ?じょ、冗談…だよ…ね?」

「うそじゃねぇよ、本気だ。」

その言葉を聞いた瞬間、頬に一筋の涙が流れた。

その途端、大粒の涙が私の目から無数に流れ落ちる。

「ちょっ、そんなに…嫌だった……のか?」

不安そうに私の顔を除く広瀬くん。

私は大きく横に首を振って、震える声で、
「わた…し、まさかそん…なこと…っ、言ってもら……えるなんって、おもっ……ってなくって……うれ………うれしっ…かったから……っ!!」

自分でもうまく聞き取れないくらい途切れ途切れの言葉たち。

ちゃんと伝わったのかな…。

「ぷっ……あははっ、はははっ!焦らせんなよなぁ、俺嫌われてんのかと思ったじゃねぇかよ!」

笑い声と少しホッとしたような低い声。

「嫌いなわけないよぉ……、私だって…前から好きだったんだよ……?一目惚れ…だったんだよ……?」

自分で言っといて顔が熱くなった。

広瀬くんはニカッと笑って、

「じゃあ、返事はOKってことだよな?」

「……うん」

「よっしゃぁーっ!ありがとなっ、雪村……みず…き?」

さらに私の顔が熱くなる。

呼び捨てにされるなんて…何度夢見たことだろう。

こんなにも早く夢が叶っちゃって大丈夫なのかな。

「顔、赤いぞ?」

また広瀬くんは私の顔を覗きこんでいた。

さっきよりもさらに顔が近くなって、さらに心臓の音が早くなるのがわかった。

「だ…大丈夫なんかじゃないよっ!もう……心臓もたない…よぉ…」

そう言って顔を覆い隠す私の手を取って、

「これからよろしくなっ、みずき」

いつもの元気な笑顔を向けてくる。

「こちらこそだよ、しん…きくんっ!!」

心輝くんは目を逸らして口を隠した。

耳まで赤くなっていて、私まで恥ずかしくなる。

何も言わずに心輝くんは私を手を引いて廊下を歩いていった。

2つの影を並べて……。