「ねえ、伊都」

「んー? なにー」

「うわ、すっごいいい笑顔……」


くるりと振り返った伊都がいつもは見せないような清々しい笑顔で(伊都にしては、だけど)、多少なりとも恐怖を覚える。


「はあ、これもあって女の子たちにいじめられたこと言いたくなかったんだよなあ……」

「なんだよ、これもあってって」

「伊都は暴力とか絶対に振るわないけど、その分言葉がきつすぎる……。 女の子にも容赦なさすぎるし、ちょっと同情しちゃうくらいだよ……」


伊都は他人に興味があまりないから怒ることだって滅多にないけれど、いざ本気で怒らせると、怖いじゃ済まないくらい怖い。


無表情で繰り出されるきっつい言葉たちは、凶器そのもの。

それが、今日久しぶりに発動されたのだ。


「だって、俺がいないときに古都をいじめるだなんて大した度胸だなあと思って……まあ、ちょっと話しただけじゃん?」

「……だから、それが怖いんだってば」

「なにがー。 怖いとか失礼だな」