そんなわけ、ない。

伊都のせいだなんて、私のたったひとりのヒーローのせいだなんて。


そんなわけ、あるはずがないの。


「なんで、お見通しなの……なんで、全部全部、わかっちゃうの……!」


伊都が、私の嫌がることをするわけがない。

いつだって伊都は、私のことなんてお見通しだから。


「逆に聞くけど、なんで隠そうとするわけ」

「だって、伊都、しんどいのにまた無茶するじゃん……!」


伊都は私のヒーローだ。

誰よりもかっこよくて、誰よりも強くて、誰よりも優しい。

いつだって、私を守ってくれる。


だけど、ヒーローだって人間なのだ。

ヒーローだって、ケガをするのだ。病気になるのだ。疲れるのだ。





私のせいで、死んでしまうかもしれないのだ。