私、あなたたちのことなんて、名前も知らないんだよ。

あなたたちもきっと、私のこと、全然知らないでしょう?


なのに、どうして。

どうして、こんな風になっちゃったんだろう。


「ね、黙ったままとかさ、超うざいんですけど」

「やっぱ深町くんいなきゃ、あんた全然だめなんじゃん」

「ていうか、男に媚びて守ってもらうとか気持ち悪すぎだし」


……わかってる。 伊都がいなきゃ、なにもできないことなんて、もうとっくにわかりきっているんだ。

私には、伊都しかいない。

私の存在を証明してくれるのは、伊都だけだ。 伊都なしには、きっともう、生きていけない。

だめだって、わかってる。
おかしいって、わかってる。


だけど、もう、ここまできてしまったんだ。 きっと、あの頃の私にはもう、戻れない。


放っておいてくれればいいのに。

みんなみんな、どうして、私の世界に土足で踏み込もうとするの。


汚い、気持ち悪い、……恐い。



お願いだから、どこかへ行ってよ。

私の世界には、伊都さえいてくれればそれでもう十分なのに。