「お前も少しは上手くなった?」
クールな笑顔で問い掛ける顔はギターの音とは正反対で意地悪な顔。
「少しはね」
少し嫌味を込めてそう言うと拓哉は少しだけ目を細めて笑う。
いつもそんな笑い方すればいいのに。
「凛の曲のスコアないの?」
「あるよ」
あたしは鞄の中から数枚スコアを取り出して拓哉に渡す。
「お、サンキュ」
拓哉はあたしのスコアをじっくり見てギターで音を出していく。
いつもあたしが弾いてるのとはどこか違うなやっぱり。
ていうか拓哉にあたしの曲を弾かれるのはちょっと恥ずかしい気もする。
だってあたしにギターを教えたのは目の前のこの人だし。
あたしなんかじゃきっとずっと敵わないから。
「綺麗な曲だな」
「あ、ありがとう」
「歌えよ、お前」
「はっ!?」
「いいだろ別に、まだ路上で歌ってんだろ?俺の前で歌うぐらい容易いだろ」
あたしの返事も待たずに前奏に戻って奏で始める。
拓哉は相変わらずだな。
でも拓哉のギターがすごく好きでそれに合わせて歌うことの気持ち良さを知ってるあたしは思わず歌い始める。

