そのとき後ろで
キィ‥という音が鳴る。
何気なく振り向くとそこには少し風で乱れてて急いで来たのか息を切らすハルの姿があった。
拓哉はハルには気付かずあたしの手を引いていく。
あ、
という顔をしたハル。
数秒ハルと目が合ってそのまま視線を下にしてあたしの手の辺りを見て
ハルは悲しそうな目をして来た道を戻っていった。
無情にも離れていくハルとの距離。
声も出なかった。
高島さんを送った後?
偶然?
どれも違う気がした。
高島さんと帰った後なら早すぎるし偶然ならあんなに乱れてないと思うから。
じゃあ
追いかけて来てくれたの‥?
ハルはあたしを選んでくれたの?
でも‥きっと勘違いしただろうな。
右手に感じる拓哉の手の温もり。
‥もうきっと戻れない。
ハルの名前を呼んだって振り向いてはくれない。
ハルの冷たい手の感触が拓哉の温かい手に塗り替えられていく。
ねぇ、ハル
あたしの手を繋いでよ。
ハルが望んでくれるなら
いくらでも温めるから‥。
それが目の腫れてるあたしを慰めるためのものだと知ってても知らないフリをするから。

