ゆっくりと歩みを進める。本当は座り込んでしまいたいくらいだった。
ハルの笑顔が頭に浮かぶ度目の前の現実が苦しくてもう歩きたくなかった。
歩いても歩いてもなんだかすごく家が遠くてハルの存在の大きさを改めて知る。
キィ‥
後ろから自転車のブレーキをかけた音がした。
え、ハル!?
頭の中はハルでいっぱいで知らないうちに少しだけほんの少しだけ期待していたことが起こったんじゃ‥?
と勢いよく後ろを振り向いた。
「なんだよ、驚かそうかと思ったのによー」
「‥‥拓哉」
振り向いた先にいたのは拓哉だった。
拓哉には失礼だけど心底がっかりしてしまう。
「そこのコンビニでマンガ立ち読みしてたら凛が見えたから追いかけてきた」
そう言って口元だけで笑う拓哉。
昼休みにあたしを追いかけてきてくれたハルの姿と重なって涙が溢れる。
二回目はないんだね。
「え、凛どうしたんだよ?」
あまり表情を変えない拓哉の顔が困惑した表情を見せる。
「‥‥っ」
何も言えないあたしの手を拓哉の温かい手が包み込む。
「帰るか」
片手で自転車を押しもう片方の手であたしの手を引いて歩く拓哉。

