「あ、今帰り?あたし友達待ってたんだけど来ないから先帰っちゃおうかな。バイバイ」
沈黙を破ったのはあたし。
こんな嘘が勝手に口から出てくる。
「あ、そっかぁ、バイバイ凛ちゃん。」
あたしは精一杯笑顔を作って手を降った。
ハルの顔は見れなかった。
ハルがどんな顔をしているのか知るのが怖かったから。
二人に背を向けた瞬間にはりつめていた何かがはじけだす。
熱くなる目元とぼやける視界を振り切るように強く強く目を閉じて自分を誤魔化す。
目を開けるとオレンジ色の世界が広がる。
ハルが隣にいないオレンジ色の空はやけに冷たく感じた。
不自然なことはわかっていたけれど早くここから、二人の視界からいなくなりたくて夢中で走った。

