図書館からの帰り。スーパーで買い物をしてから、車でアパートに到着した。

袋の中の食材を見ると、颯太の好きなものばかり。無脂肪ヨーグルト、ベーグル、赤身のお肉。ポテトとセロリも入っている。いやいやながらも、結局颯太のご飯を作ってしまう自分が、嫌でならない。

なんで「ぜったい作らない」って言えないんだろう。料理好きでもないのに。

炎天下に降り立つと、すぐにげんなりしてしまう。翠が思わずため息をつくと、颯太が無言で翠のスーパーの袋を手に持った。翠の後から鉄製の階段を上る。

翠が鍵を開けようとカバンに手を入れた時、横から「おかえりなさい」と声がした。

「ああ、お隣の……」
「宗谷です」

エプロンをした奥さんが、ニコっと笑顔を見せた。

「一緒にいつも帰っていらっしゃるんですか?」
「ええ、まあ」
翠は鍵を開けながら、そう答えた。

「いいなあ、仲がいいんですね。うちは、私が働いてないので、日中は一人ぼっちで寂しいんですよ」
「そうですか」
「引っ越したばかりで、お友達もいないし」

奥さんはしゅんとした顔をする。

「せっかくお隣になったので、これも何かのご縁ですから、仲良くしましょう」
翠は思わずそう言った。

「うれしいです」
奥さんの目が輝く。

「いろいろこの辺りのことも教えてほしいし。安いスーパーとか、いいお医者さんとか」
「私もそれほど長くここに住んでいるわけじゃないので、よくわからないんですけれど、知ってることは教えられますよ」
「ありがとうございますっ」

奥さんは小柄だが、グラマーな身体を少ししならせて、お辞儀をした。