ウソ夫婦


「さてと」
試着を終えて、ホテルのロビーに戻る。

「お昼だね」
先ほどのジェイの表情を見て、あすかにはスペシャルな喜びが生まれている。

ぜったい、わたしに見とれてた。えへへへ。

「遅めだけど、ランチする? お台場なら、おすすめいっぱいあるよ」
あすかはそう言って、ホテルのエントランスへと歩きだそうとしたが、ぐいっとジェイに腕を引っ張られた。

「どうしたの?」
あすかが驚いて振り向くと、ジェイがすぐ側にいる。二の腕を、強く掴んでいる。

「もう、チェックインできるな」
「……そ、そうね」

あすかの頭に警報が鳴り出す。

「でも、お腹減らない?」
「減らない」
「わたしは、減ったかなぁ」
「ルームサービスとればいい」

いろいろと理由をあげてみるが、ことごとくジェイに交わされる。半ば引きずられるように、ジェイにレセプションに連れて行かれた。

「ジェイ。観光してみない?」
「しない。俺、住んでたし」
「ほら、スカイツリーとかさ。登ったことないじゃない」
「高いだけだろ。興味ないし」

さっさとチェックインを済ませ、エレベーターへと連れて行かれる。

「ねえーってば」

無視。

「ちょっと、待ってよ」

ガン無視。